はとバスの富士重工製ニューデッカー

  はとバス初のTV・VTR付き貸切用一般車であったニューデッカーは1981年の秋に3台導入されたのを皮切りに毎年増備され、1984年の新車を含めると23台となり、一大勢力となっていました。残りの貸切用一般車も全てハイデッカーとなっていましたので、1984年にははとバスの貸切車は全てがハイグレードな車両で揃う体制になっていました。しかし、1982年には三菱ふそうエアロバスが登場し、日野も大型観光バスのスケルトン一本化を図り、車両のハイグレード化は加速していました。更に、1985年にはつくば博‘85の開催も予定されていたので、関東では1985年の春に新型観光バスを多数購入する予定をしていた事業者も少なくありませんでした。一方、はとバスが1977年以降継続的に購入をしていたいすゞの大型観光バスも1985年購入車からは新シリーズであるLVに移行予定であり、これを機にはとバス社内では新型ボディの採用の機運が高まっていました。はとバスは永年いすゞの純正ボディを架装したバスを導入していましたが、新シリーズに移行しても純正ボディはモデルチェンジをしない為、はとバスは新デザインバスとして富士重工の新型ボディR3P型を採用しました。このボディはケイエム観光バスが1984年に導入した特注ボディがベースとなり、従来車両より一層高級感の漂うデザインとなっていました。

はとバスはこの新型バスを1985年の春と夏に分けて採用し、定期観光用と貸切用の計21台もの台数を導入しました。これら車両ははとバスの一般車としては初めてスイングドアを採用し、全国的に珍しいボディと相まって、はとバスの一般車の新しい顔として活躍をしました。この年からいすゞガーラIIIが本格採用される1998年まで、はとバスの一般車の主力車種として富士重工製のバスが継続的に導入されることになります。

富士重工製のニューデッカーは1987年までの3年間導入されましたが、基本的には同じ車両を継続的に導入するはとバスとしては珍しく、導入された年式により外観が異なっていました。1986年に導入された車両は、ボディが新型汎用タイプのHDI型に変更となり、デザイン上はR3P型程のインパクトはないものの、冷房ダクトの位置変更など細部がリファインされました。1987年も同じHDI型ボディのバスが導入されましたが、現場の強い声を反映し、前扉が折戸に変更されました。従って、外観は1985年=R3P型、1986年=スイングドアのHDI型、1987年=折戸のHDI型という、3年3様でした。

富士重工製のバスには、外観以外にも従来車と異なる点がありました。1985年購入車から、一般車では珍しい天井をレザー張りにし、高級感が増しました。装備品も、1985年車は従来車とほぼ同等でしたが、1986年車からはオーディオがCDに変更されるなど、グレードアップされました。更に、1987年の車両には、もう一つ大きな特徴がありました。1979年以降、はとバスでは定期観光用に正座席49+補助席6、貸切用に正座席45+補助席10のシート配列をそれぞれ採用していましたが、1987年からは用途に関わりなく共通の正座席45+補助席10のシート配列となると同時に、全車TV・VTRを装備するようになりました。

同じネーミングながら、1985年以降の富士重工製のニューデッカーは従来車よりもかなりグレードアップされ、1988年に国産スーパーハイデッカーが一般車として登場しても、はとバスのスケルトンタイプの主力としての大役を担いました。

写真解説

写真①

1985年に大量導入された富士重工R3P型ボディを架装した車両はシャーシもいすゞの新しいLVシリーズとなり、スウィングドアの採用でより一層高級感が増しました。写真は試験的にアルミホィールを装着していた唯一の車両です。このタイプから窓周りのブラウン化が始まりました。つくば博‘85の駐車場では大変目立つ存在でした。

写真②

1986年に導入されたHDI型です。前年導入のR3P型と比較すると、前面がよりボクシーなデザインとなり、冷房用ダクトも側窓の一番前に移動しました。この年からカラオケもCDになるなど、装備がグレードアップしました。貸切観光用は計8台が導入され、前年のR3P型13台と合計すると、貸切用ニューデッカーの約半数が富士重工製となりました。写真②と③は定期観光用車両ですが、外観は貸切観光用と全く同じです。

写真③

1986年に引き続き、1987年も富士重工のHDI型が導入されました。外観上の大きな相違点は前扉の形状で、機能を優先した結果、折戸が採用されました。スウィングドア風のデザインは夏に導入した車両から採用されましたが、春に導入された車両も同デザインに改造されました。また、この年式からはとバスの一般車両は定期観光用・貸切観光用ともに基本的に同じ仕様となりました。尚、この車両も導入当初は「はとマーク」を掲げていました。

写真④―おまけ

前回はいすゞのハイデッカーII改型のニューデッカー各種を写真でご紹介しましたが、今回はおまけでハイデッカーII改型の定期観光用車両をご紹介します。側面に大きな赤文字表記がなくやや地味に見受けられますが、個人的には落ち着いた雰囲気のスケルトンタイプも大好きでした。このタイプは1982年と1983年のみの導入で、計9台と少数派でした。1984年には基本的には貸切観光用と同じ外観になりましたが、貸切観光用が全長11m級であったのに対して、定期観光用には従来通りの全長12mクラスが導入されました。

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